ツイッターを見ていると、たまに「一人暮らし vs 実家暮らし」という論争が流れてきます。
先日目にしたのは、
実家暮らしで浮いた月10万円を年利5%で運用すると、20年で約4,000万円になる
というシミュレーションでした。数字のインパクトは強烈ですし、複利の効果を説く主張として、計算自体は間違っていません。
ただ、投資家として数字を扱う身として、また、実際に資産形成をしてきた身として、この議論には少し違和感を覚えました。計算は合っています。ただ、これを真に受けるのは危ないなと感じました。
今回は、金銭的な損得勘定だけでなく人生設計の視点で自分の考えを整理してみようと思います。
数字の正しさと、隠れた前提
まず、元となっていた主張を整理します。
一人暮らしの生活費:月15万円
実家暮らしの生活費:月5万円
差額の10万円を年利5%で運用する
これを継続すると、10年で約1,550万円、20年で約4,100万円の資産になります。
実家暮らしができる環境なら最大限活用すべきだ、という結論は、資産形成の効率だけを見れば非常に合理的です。
しかし、このシミュレーションにはいくつかの暗黙の前提が含まれています。
- 20年間、ライフスタイルが変わらない(ずっと実家にいる)
- 生活スキルや金銭感覚は、勝手に身につく(あるいは考慮しない)
- 将来の結婚や独立にかかるコストを計算に入れない
など、現実ではそこそこ起きるであろうことが、全て無視されています。
現実には、20代から40代にかけてライフイベントが何も発生しないと仮定するのは無理があります。結婚すれば独立する可能性が高いですし、親がいつまでも元気で家事を担ってくれるとも限りません。
いずれどこかのタイミングで生活のセットアップは必要になります。問題は、そのコストと労力をいつ払うかです。
学生時代の一人暮らし生活が資産になった
Hodo自身のケースを振り返ると、学生時代から一人暮らしをしていました。 仕送りはなく、奨学金(約8万円)のみでの生活です。 当然、贅沢はできません。しかし、この時期に低い生活コストで生存する感覚が身についたことは、その後の資産形成に大きく影響しました。
当時、バイト代は遊びや欲しいもの(20万円のPCなど)に使っていましたが、不思議と貧乏で辛いという感覚はありませんでした。必要なものには投資し、必要のないものには一切金を出さないという判断基準が、生活の中で自然と養われたからです。
社会人になって収入が増えたとき、学生時代の金銭感覚がベースにあったおかげで、生活水準を必要以上に上げずに済みました。もし実家暮らしで、給料の大半をお小遣いとして使う生活からスタートしていたら、今の資産額には届いていなかったかもしれません。
一人暮らしで得られる生活管理能力や金銭感覚は、目には見えませんが、長期的には複利で効いてくる資産だと言えます。
社会人1年目の全部乗せはリスクが高い
一方で、誰でもすぐに一人暮らしをすべきとも思いません。 特に社会人1年目は、仕事に適応するだけで精一杯になりがちです。
仕事のプレッシャー、新しい人間関係、精神的な負荷。そこに加えて、家事全般や家計管理まで一気に背負い込むのは、キャパシティオーバーになるリスクが高いです。 精神的に潰れてしまっては元も子もありません。
実家暮らしという選択肢は、社会人初期の過度な負荷を避けるための安全装置として機能します。
結婚生活のスタートアップ摩擦
また、実家暮らしの是非は、結婚などのパートナーとの生活が始まるときにも影響すると考えます。 両者ともずっと実家暮らしだった場合、結婚生活のスタートは意外と大変です。
家具家電の選定、各種契約手続き、家事の分担、生活リズムの調整など、すべてをゼロから構築しなければなりません。 この時、どちらか一方でも一人暮らし経験があれば、初期トラブルを回避しやすくなります。
「生活を回すための暗黙の了解」を知っている側がフォローできるため、摩擦が減り、生活が安定するまでの期間が短くて済みます。
結果的に、初期の離婚リスクの低下にもつながる可能性があると考えます。
現実的なのは段階的なシフト
結局のところ、実家か一人暮らしかという二元論ではなく、時期によって使い分けるのが合理的というのがHodoの考えです。
例えば、以下のようなイメージです。
学生時代: 一人暮らしで、基礎的な生活力と金銭感覚を身につける(失敗してもダメージが小さい)。
社会人初期: 実家(あるいは実家的なサポートがある状態)で、仕事への適応と貯蓄に集中する。
独立前: 結婚や完全独立を見越して、生活のセットアップ準備を始める。
このように段階を踏むことで、コスト、リスク、精神的な負荷のバランスが取れるように思います。
複利の力は偉大ですが、数字だけに最適化して人生の他のコスト(人間関係の摩擦、精神的な余裕、経験の機会損失)を無視するのは危険です。 お金は後から取り返せますが、メンタルの不調や人間関係の失敗は、修復に高いコストがかかります。
どちらが得か、という短期的な損得や、20年後のシミュレーション上の数字だけでなく、いつ、どの程度の負荷で生活力を身につけるかという視点で設計するのが、結果的にバランスが良く納得感のある人生になるのではないかと思います。


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