最近読んだ本のメモです。今回も4冊で一旦まとめます。
Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法 ロルフ・ドベリ(評価:B)
心理学、行動経済学、哲学(主にストア派)の知見をベースに、より合理的な意思決定を行うための52の思考法をまとめた実用書です。各学問から集めてきたTIPS集という感じで、正直割と当たり前のネタが多い印象でしたが、「誓約」という考え方は面白かったです。ソシャゲに課金しないというのも自分の誓約のひとつで、誓約にしておけば悩まずに跳ねのけられます。
著者はバフェットやマンガーが好きなようで、「いかに成功するか」ではなく「いかに失敗を避けるか」という視点を繰り返し強調しています。失敗を避けないことには成功もできないので、これは納得です。一方でストア派を唯一の実践的な哲学と持ち上げたり、生まれてきた奇跡を評価しろと言われたりする箇所は、ちょっと神経質というか権威主義的だなとも感じました。過去が不幸だとしても、いまも不幸でいる必要はないという一文だけは、読んでほしい人がちらほら思い浮かびます。
精読アレント『人間の条件』 牧野雅彦(評価:A)
AIおすすめ本です。アレントは、ナチスの戦犯アイヒマンを観察し「巨大な悪は、必ずしも悪魔的な人間によって行われるわけではない」と論じたことで有名な哲学者で、効率化が極限まで進んだ社会で人間の役割を考え直すために、いま再び読まれているようです。
本書はアレントの主著『人間の条件』の解説書です。人間の営みを、生命維持のための終わりなき「労働」、道具や芸術といった形あるものを作る「仕事」、言葉と行為を通じて自分を現す「活動」の3つに分類し、近代は労働だけが肥大化して、人間がただ食べて消費して死ぬだけの「労働する動物」に引き下げられた、と批判する内容です。
正直、今の社会システムを全て批判しているようにも読めます。資本主義社会の限界は誰もが薄々感じているところですが、そこからどう降りるのかはチキンレースになっているので、壊れるまで誰も降りられないと思います。その上で、個人としてはより良い選択をして生きて行くしかない。理想を追い求めたい気持ちもわからなくはないですが、自分にはそこまでやれる余裕はないでしょう。
考えさせられたのはAIとの関係です。アレントは人間に残された最後の自由は「思考すること」だと言いますが、AI社会になれば、その思考すら道具に従属することになるでしょう。今後の思考は、道具が提供する選択肢の中から選ぶのみにとどまる気がします。それが尊厳を失うということなら、いまの大半の人はもう失っているでしょうね。AIの領域と人がやる領域を分けるとしたら、将棋のように保護しない限り人間が負けるので、損得抜きで人間がやることに価値がある分野、エンタメや競技や芸術くらいではないでしょうか。
もうひとつ、FIREとの接続です。FIREとは、アレントの言う「ポリスに参加できる条件」を手に入れたということなんですよね。生命維持のための労働から解放され、対等な立場で公的な場に出ていける条件です。ただ、その条件を活用する人は皆無ではないでしょうか。自分も社会を変えたいわけではありません。FIREする人間としては、作ってて楽しいから作る、それだけでいいと思っています。別に金を稼ぐ必要は無いのですから。まあ、たまに我にかえって人間の条件とは何かを考えることで、FIRE後の生活で何か気付いて行動が変わるかもしれません。
1億円の貯め方 貯金0円から億り人になった「超」節約生活 絶対仕事辞めるマン(評価:C)
1億円を超絶ドケチ生活で貯めた方の著書です。エンタメ本として読んだのですが、節約の具体的な方法は書かれておらず自伝が中心で、我慢して無理している感じのエピソードが多いのが気になりました。自身の厳しさをアピールしたり周りを下げて自分を相対的に上げたりする書き方は、最近のインフルエンサーがよくやる手だなと感じつつ、その人の人生が垣間見れる一冊としては面白かったです。NISA貧乏な若い人が反面教師として読むと、何か気付きがあるのかもしれません。
定年夫は、なぜこんなに「じゃま」なのか? 「大量定年時代」の夫婦学 西田小夜子(評価:D)
図書館でたまたま見かけた本です。FIRE後は妻との時間が増えるだろうから、どういった問題がありそうか知るために読むことにしました。ただ、本の構成として極端な小説風の例ばかりで、一般論としてどうなのかという分析がなかったのが期待外れでした。夫婦それなりの距離感で依存しきらず生きていくのが大事なんだろうな、とは思っています。


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